承認欲求の女

   社会的地位の高い男性の妻は、承認欲求の強い女。

 

 承認欲求をどう満たすかも、おそらく人それぞれで、多くの男性と関係を結ぶことのみに向く人だけでもないのだろう。

 肩書きや年収の立派な男性と結婚し、妻となる。彼女たちにとって、これほどの「承認」はない。立派な男の妻として選ばれた女という社会的評価を得られるし、他の女たちからはうらやましがられる。幸せな恋愛と経済的に豊かな生活の両方を手にしているのだ。

 

 誰もが羨む境遇の、仲睦まじい夫婦。しかし、妻がいい人でいることは長くは続かない。いずれ関係は破綻する。なぜこのような推察ができるのかというと……

 

 身近にいたのだ。このような夫婦が。

 

 その人は医師だった。恋愛を経て、美人妻を得たが、子どもたちが大きくなり家を出ると、自分の親兄弟に打ち明けた。妻には自分や子どもたちへの暴力や暴言がある。何度も離婚を考えたと。親兄弟と話し合い、彼は夫婦の家を出た。

 

 私は最初、その話を信じられなかった。何というか、そんなことをしそうな人に見えなかったからだ。むしろ普通の人よりも愛想が良く、周囲に彼女を悪く言う人はいなかった。

 

 ……一見、普通の人よりも感じのいい女。自分の不健全性を隠して生きていて、他人に自慢できる男と結婚。

 

 考えてみれば、社会的地位の高い男性の成婚率は高いが、皆どこか不満があるというか、あまり幸せそうではない顔をしている。

 

 なぜ気が付かなかったのだろう。皆、結婚に失敗しているということに。